配当金のルールは会社法上のルールはあるにせよ、子会社から吸い上げるルールについてはあまり表に出てきません。上場企業の経理部長自ら、そのルールについて分かりやすく投稿します。親会社の企画、経理部門の方向けに役に立てたらと思います。
子会社からの配当基準
子会社の純資産の状況によっては配当金を出せない場合があります。
日本国内にある子会社(中小企業)から親会社への配当制限
制限1:分配可能額
この算式の範囲内であれば配当金を出すことは可能という意味です。
会社法上、分配可能額の算式があります。
分配可能額=その他資本剰余金+その他利益剰余金ー自己株式帳簿価額
その他利益剰余金は中小企業で言うと任意積立金、繰越利益剰余金となります。
投資有価証券を保有している子会社については、その他有価証券評価差額金の差損については控除を忘れずに。
注意しなければならないのが、この順番で実施していきます。
1.決算日における剰余金の額の算定(決算締め)
↓
2.分配時点における剰余金額の算定(決算日から配当日までの剰余金算出)
↓
3.分配可能額の算定(可能な配当額の算出)
制限2:純資産300万円以上か
配当後の純資産が300万円以下となっても配当は出来ません。
その他配当額の1/10を利益準備金の積み立てを資本金の1/4まで実施することが必要。
日本国外にある子会社から親会社へ送る配当制限
各国の税制によりことなるので、現地会計事務所等に確認が必要です。
ちなみに、私が出向していたタイでは債務超過の会社は配当は出来ません。
社内でルールを決める
子会社の配当制限を必ず確認し、配当金額を算出します。
但し、社内でルールを決めないと場当たり的な経営となってしまいますので具体的にどのような事項を確認し、どのようなルールで配当額を決定するか説明していきます。
チェック事項4選
利益は出ているか?
まずは利益が出ていないと分配可能額の制限にかかってしまうのでここは優先で確認します。
今後の利益計画が右肩あがりであれば何も申すことはありません。
逆に、今後右肩下がりの業績であれば、将来のビジネスに対して改善が必要となります。
売上を伸ばすか、費用を抑えるかの方策を考えないといけません。
純資産は十分か?
分配可能利益を超過する純資産になっているか?
配当金を出して債務超過にはならないかを確認します。
キャッシュフローは十分か?
通常であれば、十分なキャッシュフローにより、そこから配当金を支払うのが普通と思います。
しかしながら、配当金を支払うことによって借入金が増加する会社もあると思いますが、ある程度は致し方ないことと思います。十分なキャッシュを獲得できなかったのは子会社の責任です。この辺は、同時に親会社の資金繰りや純利益の状況を確認しながら進めるのがベターです。
借入金の返済状況は?
多額の借入金があるのにもかかわらず、さらに配当金を支払うことは会社の財務状況を悪化させるため避けた方がよいでしょう。
そもそも多額の借金がある場合には、上記、将来の利益やキャッシュフローが悪化しており、現状の貸借対照表が棄損している可能性があるので、将来のビジネスの方向(売上、利益)については十分に検討するべき内容と思います。
ルールの例
ある会社は純利益の100%を配当金としていたり、ある会社はその都度配当金額を決めていたりと親会社の方針はさまざまです。
ここで、いくつかの例を紹介させていただきます。
配当性向で決める。
配当性向(%)= 配当金支払総額 ÷ 当期純利益 × 100
上場企業の配当性向は30%が目安です。
当期純利益基準
当期純利益基準 = 当期純利益 × 30%
当期に利益が出ているか否かで決定します。
親会社のメリットは大きな利益が出れば大きな配当金が得られることです。
親会社のデメリットは損失が出れば、配当金が得られないことです。
資本基準
資本金基準 = 資本金 × 10%
利益の増減に関係なく、配当金を得ることです。
親会社のメリットは、安定的な配当金を得ることが出来ます。
子会社のデメリットは、損失が継続しても配当金を支払わなければいけないことです。
当期純利益基準と資本金基準の折衷案
当期純利益基準と資本金基準と比較してどちらか大きい方を配当金額とする案。
もし、当期純利益基準による金額が資本金基準の金額が大きかった場合、
当期純利益基準 > 資本金基準
当期純利益基準で配当金額を決定します。
親会社のメリットは当期損失の場合でも安定的に配当金を受領することかつ、子会社が儲かったときには親会社にも恩典があるということです。
子会社のデメリットは、損失が継続しても配当金を支払わなければいけないことです。
キャッシュフロー基準
キャッシュフロー基準 = 年間営業収支に関するキャッシュフロー × 30%
子会社のメリットはキャッシュフローが損失になれば配当金は支払わないことです。
親会社のデメリットは子会社が損失になった場合には配当金が得られないことです。
借入残高基準
借入金の返済計画が将来的に見えているのであれば、将来の損益計画を見て配当金を決定します。
子会社の将来的なPL,BS,設備投資、資金繰りを総合的に考慮します。
最低3年間の財務諸表を作成する必要があります。
赤字の場合にはどうするか?
基本的に法律上の配当可能額をクリアすれば赤字でも配当金を出すことが出来ます。
例えば、貸借対照表を見て、純資産比率が20%以上であれば配当金を出してもよいと考えます。
上記、ルールを設定し、個別の子会社の状況により配当金を出すか否かを決定すべきです。
必ず投資回収を確認
多額の資本金を出資して子会社としたので、投資回収については確認をすべきです。
子会社出資額=SUM(N年度配当額、N+1年度配当額、N+2年度配当額・・・・・)
これで、投資した成果が出ているのか否か?投資が成功したか否か?を確認することが必要です。
もし失敗であれば、撤退し次の事業に経営資源を投入する必要があります。
まとめ
いかがでしたか?
配当金のルールは会社ごとに決まっており、年に1回でも2回でも可能です(ただし、分配可能利益の範囲内)。
自由にルールを作成出来る判明、ルールが守られない場合もあります。
そこは親会社がしっかりした意思を持って遂行していかなければいけません。
上記ルールを設置し、実際の配当金決定の際には個別に子会社と相談していくのもよいでしょう。
子会社が多く存在する会社はバッサリルールを作成し運用する方が手間なくよいでしょう。
配当金基準等は簿記、会計士、税理士で詳しく勉強出来ます。私もお世話になった大原簿記のサイトを貼っておきます。尚、実務に関しては会計士、顧問税理士等にご確認していただき進めていただければと思います。
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