TOEIC800点、BATIC上級あるから海外駐在いける!と淡い期待をしている方がいれば、それは残念な期待です。経理スタッフとして駐在を期待しているなら、まずありえません。その理由を上場経理部長のとくのりが解説します。
このブログの読者の対象は、海外駐在をしたい経理部員、これから経理の資格を取得して今ある英語の資格を生かしたい方、簿記初心者で海外志望がある方が対象です。
出向とは経営者になること
グローバル企業が本社の人員を出向させるということは、つまりは
現地の経営を親会社に代わってやってくれ
ということです。
親会社の社長が現地に行って経営が出来ないから、出向させて経営をやらせるのです。
ということは、スタッフではなく、そこそこの経験のある人材を管理職として送り込まれるのがほとんどです。
そうです。管理職ですので会社側に立って判断し、従業員を使っていく必要があります。
一般的に、出向者は製造業において、新規に拠点を設立する場合、技術者が最初に出向し、次に営業、、、、で、経理の優先順位は高くはありません。
設立当初は技術者(=社長)が経理部長を兼ねる場合が多いですが、拠点が拡大すると経理部長の実務時間がなくなり、また扱う資金量も増加し、経理の重要性が増すため、本社から経理部員が管理職として送り込まれます。
新興国は年寄りを敬う文化が多く、あまり若くして出向しても従業員が言うことを聞いてくれない事もありえます。ですので、なおさら管理職としての地位を確保してから出向する必要があるのです。
スタッフで出向はありえない
例えば、スタッフの立場で出向は可能なのでしょうか?
それは難しい状況と思います。
理由は
1.現地会計基準に精通していない
2.スタッフとして出向させることに費用対効果を見込めない
の2つが挙げられます。
1.現地会計基準に精通していない
については、勉強すれば大丈夫と思うかもしれませんが、ここでは
言葉の問題
が生じてきます。
現地会計基準はすべて英語で記載されているとは限りません。もちろん、現地語が読めるのであればよいですが、ほとんどの方は言語の理解に苦しみます。ただ、アメリカであれば問題はないです。
2.スタッフとして出向させることに費用対効果を見込めない
についてはどうでしょうか?
たとえ、上記1でアメリカであっても、この問題がハードルとなります。
海外出向することは年間1人あたり10百万円から15百万円の経費(給与、アパート代、その他出向手当等々)はかかります(会社により異なりますが)。当然、会社負担です。
1人のスタッフが、この経費を上回るパフォーマンスを出せるかということです。
経理部員にとっては、このハードルは相当高いものと推測します。
一人の技術者であれば、改善や開発でこのハードルを越えることは容易かと思われます。
目指すは、現地経理部長!
ということで、スタッフではなく経理部長として出向することを目指すべきです!
では、現地の経理部長って具体的に何をするの?という方のために解説します。
ちなみに、私は海外出向した際、経理、総務人事、IT部門の責任者でした。
会社が上場企業の場合、経理部長で出向した場合の業務内容はこちらの通りです。
こちらは私の経験からです。他社では異なる場合がありますので。
なんだか、転職サイトの業務内容紹介のようになりましたが、参考まで。
No | 項目 | 内容 |
1 | 月次、決算 | 子会社の月次、決算締めを問題なく完了させる |
2 | 監査法人対応 | 決算上問題となる点があれば、事前に監査法人と打ち合わせ |
3 | 資金管理 | 資金活用を積極的に実施、不足の場合には率先して改善策を遂行 |
4 | 経理部人材管理 | 最高のパフォーマンスが可能となるように人材確保 |
5 | 不正等 | 不正等の発生防止 |
6 | その他 | 関係者に業績説明責任(本社へのレポート)税務署対応、重要な意思決定、突発的な案件対応 |
海外出向とは自分の業務以外でも多くの業務をこなす必要があります。
海外経理部長の必須条件
資格よりも、むしろ実務経験がものを言います。
1.決算締め、税務申告、資金繰り
2.マネージメント能力
があれば務まります。
1.決算締め、税務申告、資金繰りは知っているか否かが重要です。
実務は現地経理スタッフがやりますので、判断業務になります。
判断をする際に経験がないと、難しいということです。
2.マネージメント能力については、経理はコミュ力が重要ですが、海外出向ではなおさら重要です。
もし、コミ力に自信がない方は、経理はコミ力必要 に詳しく書いてありますので、参考にしてください。
現地特有のお作法みたいなものは留意してから出向をすべきです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
海外出向は経理スタッフでは難しいので、経理部長を目指してください。
転職エージェントの案件も、海外拠点にて経理課長やスタッフでの募集は少ないのが現状です。
もし、あったとしても本社採用ではなく現地採用となり、給与も激減することになります。
これからのキャリアを目指す方は、日本採用で出向する条件を選択した方が、処遇面では将来も考えプラスかと思いますので。
なお、海外出向辞令が出てしまい、出向をためらっているかたがいれば、
海外出向辞令出された!迷うな飛べ! をご覧ください。必ずあなたの人生をプラスになると思います。
コメント