あるようで無かった各損失の違いについて、東証PRIMEの経理部長自ら解説します。これらの損失3つを一度に解説している記事は少ないので、お役に立てればと思います。
減損損失
減損会計とは、所有する土地や機械などの固定資産の収益性が低下した結果、その固定資産に対して投資した金額を回収出来る見込みがなくなった場合に、将来キャッシュ・フローと帳簿価額を比較し、一定の基準に基づいて資産の価値を帳簿上で減額すること。減損会計の意味ついては、当ブログの
に誰でも分かるように、簡単解説で説明ありますので御覧ください。
減損会計の場合、固定資産は実在することが前提です。
将来キャッシュ・フローを計算する際に、例えば土地を処分する際、土壌汚染の改良費用等の現状回復費用(廃棄費用)を必ず計算に入れなくてはなりません。これはキャッシュアウトになります。
減損会計は財務会計上の内容です。言い換えると評価減のようなものです。税務会計では取得原価主義を取っておりますので、評価減は原則的に認められません。もし、減損損失が発生したら別表4で加算します。
尚、財務会計、税務会計の区別については、当ブログ 会計とは!いったい何? に詳しく説明がありますので、ご覧下さい。
仕訳:減損損失 / 有形固定資産 (直接法)OR 減損損失 / 減損損失累計額(間接法)
有形固定資産除却損
使用しなくなった有形固定資産について、除却した場合には、つまり廃棄業者等に引き取ってもらった場合には、原則、その簿価を固定資産除却損として計上することが出来ます。
除却損の場合、会計上は固定資産は実在しても除却損計上は可能です。一方、税務上は実在している場合には除却損は計上出来ません。しかしながら、有姿除却という制度を使えば損金算入可能は可能です。
会計上は、処分時の廃棄費用(取壊費用)は資産があろうが、無かろうが見積、実績共に計上 は必要です。
一方、税務上は実際に固定資産が存在する場合には、廃棄費用(取壊費用)は見積としては計上不可能です。固定資産が無い場合のそれは費用処理(損金処理)可能です。もちろん廃棄証明は必ず取得しておくようにしてください。税務調査で確認させますので。
税務上、廃棄証明があれば(=実際に廃棄して資産が無い状況)、損金算入可能です。
仕訳:有形固定資産除却損 / 有形固定資産(直接法)
OR 有形固定資産除却損 / 有形固定資産(間接法)
減価償却累計額
有形固定資産評価損
有形固定資産が、ある特定の理由によりその価値が下落した場合に評価損を計上します。
この損失が計上出来るのは以下の税法基準を満たした場合のみです。
1.災害により著しく損傷
2.1年以上にわたり遊休状態にあること→会計上は減損損失を計上することになります。
3.本来の用途に使用することが出来ないため、他の用途み使用されたこと
4.資産の所在する場所の状況が著しく変化したこと
5.更生手続き開始の決定または整理開始の命令による評価替え
6.1から4に準ずる特別の事実
逆に認められないもの
1.使いすぎで消耗している
2.償却をしなかったため償却不足
3.固定資産の取得価格が同様のものと比べて高いもの
4.機械等の急速な技術革新で古くなったもの
但し、増加償却、耐用年数短縮等可能な場合もあるかもしれません。
評価損については、税務上損金算入をする場合には、かなり厳しいものと思ってください。有形固定資産の評価を実際にする必要があり、評価機関にお願いすることになる可能性もあります。
条件は厳しいですが、損金算入は可能です。
仕訳:有形固定資産評価損 / 有形固定資産(直接法)
有形固定資産評価損 / 有形固定資産 (間接法)
減価償却累計額
有姿除却
これは税務上の扱いです。
有姿除却の前提として、有形固定資産は実在します。
法人税法基本通達7-7-2(有姿除却)
次に掲げるような固定資産については、たとえ当該資産につき解撤、破砕、廃棄等をしていない場合であつても、当該資産の帳簿価額からその処分見込価額を控除した金額を除却損として損金の額に算入することができるものとする。(昭55直法2-8追加)
1.その使用を中止し、今後、通常の方法により事業の用に供する可能性が要することがない認められる資産。
2.特定の製品の生産のために専用とされていた金型などで、その製品の生産を中止したことにより、将来事業の用に供する可能性のほとんどないことが明らかな資産。
税務上は損金算入が可能です。但し、資産が実在しますので、除却の経緯や理由を社内文書で保存するとか、稟議書や取締役会等の議事録に記録しておくべきです。
さらに、処分費用については、見積で計上した場合には、税法は債務確定主義を取っておりますので、損金不算入となってしまいますので、注意が必要です。
仕訳:除却損と同様
有形固定資産除却損と減損損失の関係
会計上は、使用していない有形固定資産については、資産の実物はあるが除却損を計上してしまおうという上場企業の方、注意です。除却損を計上するということは遊休設備で使用していない期間もあったはず。ということは減損損失の計上対象であった。
もし、金額が多額で減損損失を計上していない場合、後から監査法人が気が付いた場合、経理担当者は訂正有価証券報告書が頭によぎり、冷や冷やする思いをしてしまうかもしれません。
これを解消するには、固定資産の実棚を実施した際、遊休設備か否かを確認し、もし遊休設備であれば減損損失を仕訳登録する方法がベストと思います。この辺は、割り切りですが。
基礎は↓から学んでみてください!
会計上の有形固定資産除却損と税務上の有姿除却について
会計上:処分費用は見積、実績でも計上(費用として)すべきです。
税務上:処分費用は見積の場合、計上出来ますが確定していないので損金不算入となります。実績であれば、資産は実在しないということで除却損として損金算入となります。
例えば除却損100,見積処分費用20の場合の会計仕訳
有形固定資産除却損 120 | 有形固定資産 100 |
現預金 20 |
同内容の税務の仕訳
有形固定資産除却損 100 | 有形固定資産 100 |
となり、見積費用は損金処理されませんので注意が必要です。
有形固定資産 減損、除却損、評価損等一覧表
まとめとして、一覧表にしてみました。
今までなかなかこのようなリストが無かったので参考にしていただければと思います。
スマホの方は少し見にくいですがご勘弁を。
まとめ
いかがでしたか?
今まで、網羅的に見れるサイトが無かったので便利かなと思い作成してみました。
もしよろしければ、実務で活用いただければと思います。
コメント